アルミのメスティンが焦げ付いたり、酸性の食材に触れて表面がくすんだりするのは、
手入れの丁寧さだけでは防ぎきれない現象です。理由は化学にあります。
アルミニウムは、空気に触れると表面にごく薄い酸化皮膜(酸化アルミニウム)をつくり
、それが内部を守っています。しかしこの膜は数ナノメートルほどしかなく、こすれた
り傷ついたりするとすぐに剥がれてしまいます。さらにアルミニウムは、酸にもアルカ
リにも反応する「両性金属」として知られており、酸化皮膜そのものが酸性の溶液に溶
けやすい性質を持っています。焦げ付きは熱による皮膜の変化、酸への弱さは皮膜の溶
解。皮膜は傷つくたびに再生されますが、そのつどムラができ、弱い部分が増えていき
ます。どちらも、同じ薄い膜の頼りなさに行き着くのです。
「両性金属」という、聞き慣れない性質
両性金属とは、酸にもアルカリにも反応してしまう金属のことです。多くの金属は酸か
アルカリのどちらか一方に強い性質を持ちますが、アルミニウムはそのどちらからも影
響を受けます。柑橘の果汁のような酸性の食材が、アルミの表面をくすませてしまうの
は、この性質のためです。
焦げ付きと酸への弱さ、一見すると別々の悩みに見えるこの二つが、実は同じ薄い膜の
頼りなさから生まれている。そう考えると、対策すべき場所も、自然と見えてきます。
